基礎編
一般的な落とし穴
相関と因果、シンプソンのパラドックス、多重比較、生存バイアス、分布シフト。数字にだまされないための一覧。
この記事の要点
- 数字がきれいに出たときほど疑います。うまくいっていないときより、間違いに気づきにくいからです。
- 件数が少ない集団ほど極端な数字が出ます。「勝率 100%」の多くは、単に試行回数が少ないだけです。
- たくさん試して一番良かったものを選ぶと、その成績は「良く見えるように選ばれた」ぶんだけ甘くなります。
相関は因果ではない
2 つの値が一緒に動いていても、片方がもう片方の原因とは限りません。 よくあるのは、両方に影響する第 3 の要因(交絡因子)がある場合です。 アイスの売上と水難事故は一緒に増えますが、原因はどちらでもなく気温です。
予測が目的なら、相関しているだけの特徴量も役に立ちます。 しかし「これを変えれば結果が変わる」と言いたいときは、 相関だけでは足りません。予測の話と対策の話を混ぜないことが大事です。
シンプソンのパラドックス
グループごとに見ると A が優勢なのに、 全部まとめると B が優勢になる ── という逆転が実際に起こります。 グループごとの件数が偏っているときに起きやすい現象です。
対策は集計の単位を変えて何度も見ることです。 全体で見て終わりにせず、条件別に割って確かめます。
多重比較(たくさん試すと、何かは当たる)
20 通りの条件を試せば、まったく効果がなくても そのうち 1 つくらいは「偶然きれいな数字」が出ます。 この状態で最良の 1 つだけを報告すると、偶然を実力として発表することになります。
対策はシンプルです。
- 何通り試したかを記録する(後から自分でも忘れます)
- 本命の仮説は、試す前に決めておく
- 選び終えたあと、手を付けていないデータで確認する
件数の少なさが生む「すごい数字」
条件を細かく絞るほど、対象の件数は減ります。 件数が減れば、成績のばらつきは大きくなります。3 件中 3 件的中(100%)は、 実力を示しているというより、まだ何も分かっていない状態です。
数字を見るときは、必ず母数(何件中か)をセットで確認してください。 絞り込みを重ねた条件ほど、この確認が要ります。
生存バイアスと後知恵
- 生存バイアス… 今も残っているものだけを見て結論を出すと、消えていったものを見落とします。 「続けている人は成功している」は、失敗して辞めた人が数に入っていないだけかもしれません。
- 後知恵… 結果を知ってから条件を決めると、当然その結果に合った条件が選べます。その時点で知り得た情報だけで決められるかを自問します。
外挿と分布シフト
モデルが得意なのは、学習したデータと似た状況だけです。 経験の外側(極端な値、見たことのない組み合わせ)については、 もっともらしい答えを返しますが、根拠はありません。
また、時間が経つとデータの性質そのものが変わっていきます(分布シフト)。 ルールや環境が変われば、過去のパターンは通用しなくなります。作ったモデルは劣化するものと考え、 定期的に作り直す前提で運用します。
チェックリスト
- その数字は何件中の話か
- その特徴量は、予測する瞬間に本当に分かっているか(リーク)
- 何通り試した末の「最良」か
- 条件を決めたのは、結果を見る前か後か
- 比較相手(ベースライン)はあるか
- 学習に使ったデータと、これから使う場面は似ているか